ホテル業界と一口に言ったとしても、それがどこのホテルを指しているのかによって大きな違いがあります。日本国内のホテルなのか、海外のホテルなのか、それによって身につけるべきスキルも違ってきます。実際に働いてみると日本と海外でホテリエ(ホテルマン)の仕事内容には、どれほどの違いがあるのでしょうか。
ホテル業界を目指している人の中には、日本ではなく海外のホテル業界を目指している人もおられると思いますので、海外は日本国内のホテルとどう違うのかという点にスポットを当ててみたいと思います。
ホテル業界に就職するには、何よりも即戦力となるスキルとホスピタリティを身に付けることが大切です。
日本のフロント業務はチェックイン・チェックアウトだけ?
普段、私たち日本人がホテルを利用する時に最初に訪れるのがフロントです。その目的はチェックインで、それが終わったら部屋に入り、次にフロントに立ち寄るのはチェックアウトの時・・・という経験はないでしょうか。実はこういうホテルの利用のし方は日本人独特のものだと言われています。本来、フロントとはホテルの中の司令塔のような存在で、ホテルの中のあらゆる情報が集約されています。そして宿泊客に対するサービスについても全てが集約しているので、ホテルのサービスを利用するために海外の宿泊客は頻繁にこのフロントを訪れます。
日本人はあまりこうした習慣がないため、ホテルのフロントはチェックインとチェックアウトのためにあるという認識が強く、海外のホテルで日本人旅行客がやって来た時には比較的楽ができると思うこともあるそうです。
だからと言って、日本国内のホテルを志望している人がフロントに配属されたとしてチェックインとチェックアウトだけをやっていれば良いというわけではありません。なぜなら、今や日本国内のホテルにも大勢の外国人宿泊客が訪れるからです。
コンシェルジュサービスを使ったことありますか?
これと同じことが、ホテルにあるコンシェルジュサービスにも言えます。コンシェルジュサービスについても、日本と海外とでは考え方がかなり異なります。それは特に、欧米と日本という比較ではより顕著になります。
このコンシェルジュはいったい何をしているか、ご存知ですか?もっぱら日本国内のホテルを利用している人には、あまりピンと来ないのではないでしょうか。しかし、欧米のホテルや欧米人の宿泊客は違います。
ホテル内のあらゆるサービスが集約されているフロントには、宿泊客がホテル内での要望を持ち込んできます。その中身は多種多様ですが、それよりも多種多様なのがコンシェルジュサービスです。例えば近所にある美味しいレストランの案内や観光、その他にも滞在中に宿泊客が行いたいことなどへの対応も、コンシェルジュの仕事です。
これについても日本人はあまり利用しないのでピンと来ない人が多いのですが、外国人は違います。コンシェルジュを利用することが文化として定着しているので、時には無理難題と言えるような要望が舞い込んでくることもあります。
これについても、日本国内のホテルであっても外国人宿泊客が多いホテルであれば十分な対応力が求められるでしょう。今や日本国内のホテルで外国人が宿泊しないところなどほとんどないので、ホテル業界を志すのであれば意識しておくべき違いです。
日本と海外でホテルサービスの考え方が異なるのはナゼ?
このように日本と海外でホテルサービスへの考え方が異なることには、理由があります。ホテル業界を目指す人はぜひ知っておくべき理由です。
日本ではホテルや旅館などの宿泊施設を「おもてなし」の場所だと捉えており、それに対する対価の考え方はあいまいです。
それでは一方の海外はどうなのかと言いますと、特に欧米などでは宿泊業というビジネスの関係で成り立っています。そこで働くホテリエ(ホテルマン)などのスタッフもビジネスとして宿泊客と接するのが普通です。ホテルの宿泊料金にはサービス料という名目の料金がありますが、このサービス料がホテリエ(ホテルマン)などから受けるサービスに対する対価です。
これだけの対価を支払っているのだから、これだけのサービスを受けて当たり前というビジネスライクな考え方は実に欧米らしいところで、その考え方がホテルサービスの違いにも表れています。ホテル業界を目指す人にとって、将来の相手は世界です。世界には色々な文化や考え方があるので、それぞれに応じた接客ができるかどうかは、ホテリエ(ホテルマン)としての成長、キャリアにも大いに関係があるところです。