グランドハンドリングスタッフとは
空港の駐機場で飛行機を定刻に飛ばすために準備を行う仕事。
グランドハンドリングスタッフとは、空港の駐機場で航空機の誘導や貨物コンテナの搭降載など地上業務を行う職業です。同じく空港で地上業務を行う職業にグランドスタッフがあります。航空会社や地上業務会社によって異なることがありますが、グランドスタッフは主に空港の中で接客を担当する仕事を指し、グランドハンドリングスタッフは飛行機の周りで仕事を行うという違いがあります。
飛行機が着陸してから次に離陸するまでの間に必要な作業を行い、飛行機を時刻通りに飛ばすことがグランドハンドリングスタッフの重要な使命です。搭乗するお客様と直接関わることはありませんが、縁の下の力持ちとして荷物を間違いなく積んだり他のスタッフと協力して飛行機を安全に正しく誘導したりすることで、お客様に安心で快適な空の旅を提供します。
グランドハンドリングスタッフの主な仕事内容
特殊な装置や車両を使い、貨物の搭降載や誘導などを行う。
グランドハンドリングスタッフの仕事は、主に空港に着陸した飛行機を駐機場まで誘導して乗客や貨物などを降ろし、次の乗客や貨物、必要物資を載せて飛行機を誘導路まで送り出すことです。それぞれの作業を行うには資格を取る必要があり、多種多様な装置や車両を扱うことも特徴的です。限られた時間の中で幅広い業務を多くのスタッフで分担します。会社によって担当領域が異なることもあります。
飛行機が着陸して管制官の指示で誘導路から駐機場に向かう際、マーシャラーと呼ばれる係がパドルを用いてパイロットに手信号で指示を出し、駐機場の停止線まで誘導します。両翼に障害物が当たらないようにウィングウォッチが左右に位置し、チョークマンが停止した飛行機に車輪止めを設置します。駐機場から誘導路へ送り出す際には、車輪止めを外してトーイングカーという特殊車両で飛行機のプッシュバックを行います。飛行機は自力でバック走行できないため、トーイングカーと飛行機の前輪をトーバーという連結棒で繋ぐなどして、誘導路まで機体を押し出すのです。また飛行機を別の駐機場や格納庫などへけん引するトーイングも行います。その際にコックピットに乗り込んでブレーキ操作や機器の確認をするブレーキマンという仕事もあります。
お客様が空港のチェックインカウンターで預けた手荷物は、ベルトコンベアで目的地と便名ごとの仕分け場所へ運ばれます。荷物に付いたタグの便名と行き先を確認して、コンテナへ積み込みます。手荷物や貨物を積んだコンテナを、コンテナドーリーという荷台が連結した台車で飛行機まで運び、ハイリフトローダーという特殊車両でコンテナを持ち上げて飛行機の貨物室の指定された場所に搭載します。ベルトローダーを使用して、バルクと呼ばれるペットやコンテナに入らない手荷物を搭載するバラ積み貨物室にも運び込みます。機内食やドリンク、枕やスリッパなどの機内用品も専用車両に積み、乗客が使用しないドアから搬入します。着陸した飛行機からはコンテナを降ろし、コンテナドーリーに搭載して空港へ運びます。
着陸した飛行機が停止したら、GPUと呼ばれる地上電力装置や電源供給車からケーブルを飛行機に繋いで電力を供給します。空調も、地上からの供給に切り替えます。飛行機と空港のターミナルの出入口をつなぐパッセンジャーボーディングブリッジの装着と離脱も業務の一部です。汚水の抜き取りや飲料水の供給、燃料給油、機体の点検、機体・客室清掃、防除雪氷作業と多岐に渡る業務があります。全体の進捗を管理する作業責任者もいます。
グランドハンドリングスタッフになるには
航空系の専門学校で知識や資格を身につけるのがおすすめ
グランドハンドリングスタッフになるには、グランドハンドリング業務を行う会社に就職することが一般的です。未経験からも挑戦できますが、航空系の専門学校に進学すると、専門的な知識や技能、実際の仕事で必要になる資格を在学中に取得することもできるため、就職時に有利になります。
必要なスキルや知識
グランドハンドリングスタッフはシフト制勤務が一般的で、生活リズムが不規則になりがちです。ほとんどの業務が屋外で行われ、飛行機が運行する限りは炎天下、強風、豪雨、降雪の中でも関係なく、重い荷物や機器を扱う力仕事も往々にあります。体が資本となるので、普段からの体調管理や暑さ・寒さ対策、筋力づくりが大切です。
例えばマーシャラーが飛行機を停止線上に正確に止めなければ、パッセンジャーボーディングブリッジや電力供給装置がうまく装着できません。貨物の積み降ろしをする車両の運転や操作に一つでも間違いがあっては、怪我や事故に繋がったり、定時運航ができなくなったりします。作業はもちろん、時間に対してもシビアでなければなりません。
グランドハンドリングスタッフは、限られた時間内に多岐に渡る業務を手分けして担当します。作業に遅れや不備がないようにグランドハンドリングスタッフ同士の連携はもちろん、パイロットやキャビンアテンダント、管制官、航空整備士、グランドスタッフなど空港で働く各部署のスタッフと常に協力することが求められます。
グランドハンドリングスタッフの資格・試験情報
普通運転免許が必須。入社後に作業ごとの社内資格を取得する。
グランドハンドリングスタッフの各作業には資格が必要ですが、入社前に大前提として必要な資格は普通運転免許です。ハンドリング業務を行う会社に入社後、訓練や試験に合格して社内資格を取得しながら、マーシャリングやプッシュバックなど出来る業務を増やしていきます。他にも、配属や担当する業務によっては下記のような資格が必要になります。航空系の専門学校に入ると授業の一環で取得できるものもありますが、入社後に会社の指示や支援があることが多いです。
航空特殊無線技士・第二級陸上特殊無線技士・IATA国際航空貨物取扱士・危険物取扱者（乙種第4類）・大型特殊自動車運転免許・けん引自動車運転免許・フォークリフト運転技能講習修了証・車両系建設機械運転技能講習修了証・高所作業車運転技能講習修了証など
グランドハンドリングスタッフのやりがい
業務を終えて手を振って飛行機を見送る瞬間の達成感と喜び。
限られた時間の中で多くのスタッフと協力して作業を行い、安全かつ定刻に飛行機を飛ばすことができた瞬間は、何にも代えがたい達成感に包まれるでしょう。お客様と直接話す機会は少ないものの、手を振って飛行機を見送る時に機内のお客様が手を振ってくれるなど、グラハンならではのお客様とのコミュニケーションの喜びを味わうことができます。空港でしか使用しない特殊な機械や車両を動かせることや、試験や資格に合格することで扱える機械や車両が増え、グランドハンドリングスタッフとしての成長を実感することもできます。飛行機が好きな人にとっては、物理的に近い距離でさまざまな業務で飛行機と関わることができる、やりがいに満ちた仕事です。
